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玉櫻酒造 『玉櫻 夏純米』

夏の暑い時期に呑む日本酒は難しい。

日本酒の愉しみ方は、色々な派閥はあるだろうと思われるものの、酒米の風味のふくよかさを口の中で感じることであるという考え方は、かなりの賛同を得られるものであると思う。なにしろ米を原料に作った酒であるので、米の風味を感じなくても良いのであれば、別に日本酒でなくても良いではないか。そこで米の種類であるとか、精米歩合であるとかが重要な事柄として、酒のパッケージに記載されているのである。

夏は日本酒を呑みにくい季節

この日本酒を特徴付けていると言える米の風味であるが、連日真夏日猛暑日が続く季節においては酒を呑み進める妨げとなる。暑さに対しては、ビールのような炭酸で流し込める酒や、蒸留酒のようにロックで高い度数のアルコールを一気に流し込み酔うことの出来る酒の方が適している。日本酒には主食である米のイメージがつきまとい、夏バテ気味の体に重い食事を摂っているようで辛いという感覚もある。そして何より日本酒の暦を鑑みたときに、夏に出る酒というのが新酒の時期を外した古いものであるということを知識としてもっていれば、夏の日本酒というのはますます呑みにくいのである。

hadanon.hatenablog.com

玉櫻酒造 『玉櫻 夏純米』は米の風味をあきらめない夏酒

では日本酒蔵の各社はどのように夏の季節の酒を売っているか。各社の考え方の違いにもよるが、春先に火入れして夏を越し、2度目の火入れを行わず秋に市場に出す"ひやおろし"を少し早めに投入して夏酒として売っている蔵や、にごり酒を筆頭としたスパークリングタイプの酒を販売する蔵、そして一切の火入れを行わない生酒をそのまま夏酒として売り出す蔵もある。

今回紹介する島根県玉櫻酒造の『玉櫻 夏純米』は、火入れ1回の夏用純米酒である。同社の夏酒にはこの夏純米と、『玉櫻 涼風純吟』という精米歩合の高い純米吟醸ベースのものがあり、夏純米の方は四合瓶で1200円程度で買える。運が良ければ、近辺では厚木の寿屋酒店に置いてあるかもしれない。

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瓶から盃へと注ぐと、多少黄色みがかって美味そうな液体に対面することとなる。夏酒というから涼しそうな無色透明に近くなるのかと思いきや、これは意外である。

冷やした『玉櫻 夏純米』を呑んでみると、確かに呑み易いように諸々の味の立ち上がりが遅くなっている気がする。アルコール度数が14度と低めなのも、加水をしている結果であろうか。ただ酒米の風味しっかりで、酸味と苦味がヨーグルト系飲料のように強く起こる。夏酒だからと言って米の風味を諦めたりはしないのだ。

燗酒にしても勿論良し

四合瓶の8割ほどを呑み干して、さて残りをどうしようかと考えたとき、燗酒にすることを思い立った。夏に燗酒というのは苦行であるが、このお酒は燗にしても絶対に美味いという確信があった。そして、実際熱燗にして呑むとより苦味が際立ち美味い。冷酒派の自分が転向してしまいそうだ。

玉櫻酒造は島根県邑智郡邑南町という島根の山どころにあって、その辺りの街並は耐寒性をもった石州瓦のオレンジ色屋根が美しい。燗酒のメッカでもあり、酒蔵がまさに燗酒の布教を標榜している節もある。燗酒に転んでしまったのは、酒蔵の思惑にハマってしまったのか、それとも夏が終わり涼しい秋がとうとう訪れたからなのか。いずれにせよ、これからの季節にありがたい日本酒の銘柄として、玉櫻の名前を覚えておこうと思った次第である。

宴会の最後にだらだらと燗で呑み続けられるよう加水された"殿(しんがり)"

 

古式にのっとった生もと造りの純米酒。勿論燗で呑むことが推奨されている

 

HUB Long Root ALE 多年生麦カーンザ使用のエール

珍しい材料を使ったビールならば、無類のビール好きとして無条件に飛びつかざるを得ない。おまけにこのブログ、何故か小麦関係の情報(スペルト小麦カムット小麦)を求めて訪問してくる人達が多いものだから、今回の題材はそういった訪問者にも訴求力あるものであるはずなのである。とにかく、理由を用意して呑もう!

今回のビールは、HUB Long Root ALE!

というわけで、今回紹介するのはアメリカのオレゴン州ポートランドにあるブルワリー、HUB(Hopworks Urban Brewery)がリリースしたLong Root ALEである。

まず、HUB(Hopworks Urban Brewery)について

HUBと言えば、キース・へリングのアートのような力強い主線のロゴやラベル絵を用いるブルワーで、一言で表すならばとてもコンセプト重視なオレゴンのブルワーである。2007年の醸造開始からずっと、環境に配慮したサステイナブルなビール作りをテーマとして掲げており、醸造所兼レストランはブルドーザーのショールームとして使われていた既存の建物を流用し、なるべく再生材料を使用する形で作られた。そしてブルワーの1作目として発表されたOrganic Hopworks IPAから、オーガニック原料を使ったビール作りを続けている。

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HUBのこうした徹底的な環境重視の姿勢は、星の数ほどもあるオレゴンのブルワーの中で同社を際立たせる充分な材料となっている。ただそれ以外にも同社のコンセプトが光る分野は存在し、2011年に創業地と同じポートランドに立ち上げた2店目のブルーパブは、"BikeBar"という名前でポートランドのメジャーな自転車コース途中にあり、自転車に関連づけられた内装と多数の駐輪スペースを有する。そしてそうした自転車ライダー達へのアピールは、同社の様々なビールのラベルに描かれた自転車に関連するグラフィックなどにも見て取る事が出来る。


 

アウトドアメーカー"パタゴニア"ブランドのビール

そうしたコンセプト重視の同社に、アメリカのアウトドアメーカー、パタゴニアが新しく立ち上げる食品ブランドパタゴニアプロヴィジョンズの製品としてビールの共同開発を持ちかけた。結果出来上がったのが、Long Root ALE。こちらの製品もそれまでのHUBがそうであったように、画期的なコンセプトを持っている。

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原料の一部に多年生小麦"カーンザ"を使用

通常、ビールの原料となるのは大麦小麦の麦芽、そしてホップ。大麦小麦についてはその大部分が一年生であり、毎年畑に種子の状態で播かれ成長して実をつけると収穫され、栽培サイクルが終わる。翌年はまた畑の土壌を耕し直して、肥料を播いて播種することになる。

このように人類が知っている麦と言えば一年生というのが常識であり、それは世界各地の古い暦に毎年の麦の種まきタイミングを示す節目があるということからも分かる。古代小麦のスペルトやカムットであっても一年生なので、少なくとも数千年間人類は一年生麦に頼り切ってきたということがわかる。

パタゴニアが問題提起したのは、この一年生麦の利用が土壌の持つ本来の力を失わせ、肥料の投入なくては栽培が成り立たない仕組みを全世界的に作り上げているということ。化学肥料メーカーにとっては都合の良い話であるが、その土地とは関係ない遠い場所から持ってきた栄養で作物を作って、その分の栄養をまるまる遠い輸出先へと出荷してしまうという仕組みはサステイナブルであるとは言い難い。そこで、アリゾナ州のランド・インスティチュートというNPOが開発した"カーンザ(Kernza)"という多年生小麦の導入を促進するため、パタゴニアプロヴィジョンズでカーンザ加工製品を販売することにしたのだ。そしてHUBへのオファーへと至る。

ちなみに、製品名のLong Root ALEというのは、このカーンザが長い根を土壌に伸ばして複数年にわたった定着をするからだそうだ。

果たしてLong Root ALEの味は?

ビールのコンセプトは理解できたが、大切なのはこの製品が本当に呑める味になっているかということである。コンセプト自体に賛同が出来ても、通常のビールを呑みたいという場面で置き換えが可能になるものでなければならない。

Long Root ALEを容易に試せる場所としては、藤沢市にある湘南T-SITEがある。Long Root ALEの缶を取り扱っているところは探せばいくつか見つかるが、湘南T-SITE2号館にあるTable Oginoであれば樽生を試すこともできでしまう。湘南に住んでいて良かった。

それで、呑んだ感想。軽い感じでゴクゴク行けてしまう。小麦のビールっぽさはあまり無くて、悪く言えば凡庸なのだけれども、良く言えば癖が無い。いつものビールの代わり足りえる。

比較的癖の無い味に感じられたのは、商品コンセプト的にアウトドアの場面で呑んでもスッキリするように調整されているからであるそうだ。カーンザは原料の15%に過ぎず、20%で試作したら苦過ぎてパタゴニア側が駄目出しをしたというエピソードも。全量カーンザでビール作りというわけにはなかなかいかないのだろうけど、少しずつでも多年生小麦の活躍の場を増やすのに貢献できるのは良いことだ。良いことをしてビールがさらに美味い。

多年生麦ビールへの期待

今後全世界の麦が多年生のものに置き換わる緑の革命が起きるのかどうかはわからない。ただそこまで極論じみたことを考えなくても、穀物栽培の方法の選択肢が増え、栽培する地域毎に相応しいやり方で対応できるようになるのは良いことだ。

日本でもこうした多年生の麦の開発が行われているのか、調べてみると横浜市立大学の木原生物学研究所という機関がこれについて研究を行っている。そして木原生物学研究所といえば、ビール業界でも最近ニュースがあったばかりで、厚木市の地ビールメーカーサンクトガーレンにオファーをして、"KORNMUTTER麦畑の精霊"というビールの製品化にこぎ着けていた。同研究所で育てた二条大麦のミカモゴールデンをビールの原料とした製品であり、研究成果をビール業界に還元することに積極的なスタンスであるように見える。

国産の多年生麦ビールの登場、期待できるのでは。ビール好きが舌なめずりして待っています。

 

オート麦とスペルト小麦使用のベルギービール アーヴェルボーデ

クラフトビールが世界的に流行し、マイクロブルワリーが林立する時代になったことにより、世界中の誰にも把握しきれないほど、あまたのビール銘柄が世に存在する状況になった。そうなると生産者であるブルワーにとってみれば、数ある銘柄の中でいかに消費者の注目を集め、手に取ってもらえるかが重要となってくる。

それまで注目を浴びるビール銘柄というと、奇抜なラベルデザインのものであったり、あるいはいかにもビールの風味に合わないであろうフルーツ等を加えた飛び道具的ビールが目立っていた。ところがブルワーの戦国時代を迎えてしまうと、そういった飛び道具的ビールにもすぐに同コンセプトの競合製品が出てきてしまう。もっとマニアックなところで製品の差別化を行わなければならなくなったのだ。

古代製法とか材料の品種とかそういったマニアックなビール作り

その極致とも言えるのが、過去に作られていたビールの文献からの復刻とか、あるいは二条大麦ないし小麦+ホップという完成されたレシピを崩してのビール作り。そういう試みがあると耳に挟めばビールハンターはすぐに飛びつく。これまでも色々な試みを紹介してきた。

古代製法 ホップを使わないグルートビール
大まかな説明エントリうしとらブルワリーの若気競演を呑んでみたエントリ
スペルト小麦(ファッロ)使用ビール
大まかな説明エントリ
カムット小麦使用ビール
大まかな説明エントリ

アーヴェルボーデは復刻ビールかつスペルト小麦使用

ベルギーのヒューグ醸造所が作るアーヴェルボーデ(Averbode)もまた、一度製造が止まって失われてしまったビールを復刻したタイプのビールだ。アーヴェルボーデという銘柄は、修道院で作られていたアビービールというタイプになり、当の修道院は1134年にブリュッセルの北東に建てられたもの。かつてはビールの醸造に加えてチーズやパン、ワインの製造、出版事業なども行っていた。2013年にブランドを復活する形で外部の会社に製造委託を行い、チーズとパンとビールの製造を再開した。ビール部門を請け負ったのがヒューグ醸造所で、有名なピンクの象がラベルに書かれたビール、デリリウムなどを製造している会社である。


 

復刻に当たって、ヒューグ醸造所はただの古典ビール再現にとどまらない"攻め"の姿勢を貫いている。原料は2種類の麦芽、オーツ麦、スペルト小麦。それに4種類のホップを使い、ドライホッピングを行っている。

スペルト小麦の使用は、小麦アレルギーの回避のためというよりは、14世紀から始まった醸造では現代品種でない古代麦が主に使われていただろうという、製品のそれっぽさを出すためだろう。ただの復刻ビールよりも、ビールハンターのアンテナに引っかかり易い仕掛けにもなっている。

アーヴェルボーデを呑んでみました

そんな古くて新しいビール、アーヴェルボーデをたまたま見かけたので、購入して呑んでみた。

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修道院ビールの甘ったるい印象がなくて、モダンな辛口。青リンゴの香りが僅かにあって、スッキリと呑み易い。後からブワッと7.5%のアルコールがやってくる。パンにも合いそうだし、常飲用。でもこの辛みは何かの料理に合わせたい。瓶一本では足りない。もっとゴクゴク呑みたいと思えるビール。

マニアックだけれども、ぜひ人に勧めたい。このビールは個人的に当たり。


 

元号が変わったら日本酒の酒造年度(BY)はどうなるの?という疑問

昨年8月8日に今上天皇が"お気持ち"を表明されたことで、色々あって平成の世が平成30年までで終わり、平成31年の元旦に改元が行われるよう法案が整備されそうである。

日本酒の酒造年度は一体どうなる?

改元によって、社会に相応の混乱が生じ、また業界によっては新たな需要の創出に湧くだろう。ただ吞ん兵衛が一番気になるのは、そんなところではない。これまで年号の数字をとって呼び習わしていた、日本酒の酒造年度。これが改元を跨いでしまうと、数字の重複が起こって混乱してしまうのではないだろうか。そこのところ、どうなっているのだろう。気になって、夜の寝酒もはかどらないのである。

そもそも酒造年度って何?

酒造年度(Brewery Year)とは、字義通りにはその酒が造られた年度がいつかということである。醸造年度や製造年度という呼び方もされるが、一番目につく呼び方は年号の数字の後に付けて、たとえば平成28年度に醸造された(正確には、酒をもろみと分離する「上槽」のタイミングをとる。酒蔵の前には杉玉が出る)酒なら28BYというように略して表記するものだろう。

日本酒の年度はカレンダーどおりの年度と異なり、たとえば本日(4月25日)に醸造された酒が仮にあったとして、平成29年だから29BY、というようにはならない。酒造年度の始まりは毎年7月1日で終わりが6月30日と決められているので、例に挙げたような酒の場合28BYとなる。

誰がそんな年度を決定したのかというと、どぶろくと濁り酒の違いでも出てきた国税庁。酒税は年間醸造量によって課税額の変わる従量課税方式なので、大多数の蔵で醸造が行われない6、7月頃に区切りがあると税金対策で生産を前後されることもなく都合が良いのだ。そしてこの課税額計算の区切りに合わせて、6月決算にしている蔵も多い。

酒造年度が表に出るようになったのはいつ?

そんな現在の酒造年度、いつ始まったかというと、昭和40年のことだ。それ以前は10月1日始まりで9月30日締の年度(明治29年酒造税法)であったが、醸造技術等の進歩により冬以外にも日本酒作りが出来るようになったので、実情に合わせて年度の始まりを前倒しした形である。

昭和の頃には、あまりこのBYは重視されることはなかった。それに対して、ここ10〜20年程で酒屋の店頭でも見ることの多くなった、"古酒"のブームが消費者のBYへの関心を呼び起こし、他の表記事項とともに日本酒のパッケージにBYが表記されるようになった。ワインでいうところのヴィンテージが、日本酒についても語られるようになったということだ。

つまり、BY表記がされているのは殆どが平成の世に生まれた酒であるし、よしんば昭和の頃の酒についてBY表記を行っていたとしても、数字は40以降となり、30年で終わる可能性が高くなった平成の数字とは被る可能性がないのである。

元号 + 年数 + BYとするのが妥当なのかな…?

そこで今回の改元が行われると、数字は再び1からカウントアップされていくことになる。平成1桁年のBYの酒というものも僅かながら市場に出ているし、何か対策をとらないと混乱が生じてしまう。再びワインのヴィンテージの例を出すが、こちらは西暦表示を行っているため、キリストがこの世に再誕するとかいう事態が無い限り被りが起こる可能性はないのである。

で、改元後の酒造年度表示はワインの例に合わせて西暦にするのかというと、そもそものBYの誕生経緯が役所が決めた年度であるので、それは考えにくい。そこで、たとえば平成28年の酒造年度の酒であれば、"平成28BY"といったように元号を付けて表示するのが、妥当なのかなぁというような気がする。

 

BYの仕組みはこんな感じで、それを知っているとたとえば現在の年号と同じBYのひやおろしはありえないとか、色々と日本酒の雑学も広がり恥をかかなくて済むようになるのである。

MOKICHI CRAFTBEER(後編) ふじさわ生豚とグルートビールと

藤沢駅徒歩3分の場所にある熊澤酒造直営ビアバーのMOKICHI CRAFTBEER。前編では店の雰囲気とか、湘南ビールの3種飲み比べセットとかについて書いた。

hadanon.hatenablog.comこのビアバーで出会ったレアなものについては次回、後編で!とかこすっからい引きを書いたのだけど、今回のタイトルで全バレです。悪ははびこらない(笑)。

レアなもの1:ふじさわ生豚(藤沢産生ハム)

丁度1年とちょっと前に当ブログで紹介した、ふじさわ生豚。鵠沼魚醤という和製ナンプラーを作って販売している有限会社NORMAという会社が、特約店にしか卸さないというレア中のレア生ハムで、藤沢市で育てた高座豚を使った和製生ハムである。

hadanon.hatenablog.comそして、このMOKICHI CRAFTBEERが特約店なので、ディナータイムに行けば食べることができるのである。ルッコラとの盛り合わせが1280円ということで(前編で書き忘れたけれども、料理のお値段はわりとビアバー基準で高めだったりする)注文。

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まあ地場産品なのでブログで紹介はしたけれども、内心は国産の生ハムだから本場のものの劣化コピーだろう、そんな気持ちが全く無かったと言ったら嘘になる。

でも一口食べてみると、これがとても美味い!プロシュートやハモンセラーノとも異なる、癖になる風味である。とても脂身が強くさっぱり感はないのだけれども、そこに極限まで熟成された熟成肉の香りが相まって、口内が旨味成分で幸せになる。これはビールやワインと合わせるよりも、断然吟醸酒の方が良いかもしれない。丁度メニューにも並んでいるしね!

レアなもの2:グルートビール(若気狂宴)

このレアなものは、たまたま店に行った時のビールのラインナップに入っていたもので、この店に来れば必ず呑むことが出来る、というものではない(むしろ、同様の企画が行われないとどこでも呑めないだろう)。

これも以前ブログで紹介していたことだが、ビールの香り付けがホップに一元化される16世紀以前にヨーロッパで作られていた香草添加ビールがグルートビールである。

hadanon.hatenablog.comそんなロストテクノロジーを復活させようという試みは、国外ではいくつかあるものの、国内ではキリンビールが実験的に行ったものくらいしか思いつかない。

それが先頃、なにかと実験的なビールを出すうしとらブルワリーが中心となって、南信州ビール、湘南ビール、シャトーカミヤ牛久ブルワリー、ヤッホーブルーイング、ベアードブルーイング、ブルーマジックの30代ブルワーがよってたかって造りたいビールを仕上げた。それが題して若気狂宴(じゃっききょうえん)!

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お味の方は、ホップが全く入っていないのでビールらしい苦味の爽快感があまりない。そして添加された複雑なハーブ香だが、これが凄くデザインされた香りに感じられてしまって、LUSHの店舗の前で漂ってくるような香り?イメージの刷り込みとは怖いものである。

つまり、試みとして本当に素晴らしいと思って注文するけれども、2杯目3杯目を頼もうとはあまり思わないので…おそらく全国のビアバーでそういう評価だったろうから、グルートビールのプロジェクトが再び立ち上がる可能性は低いままじゃないかと思う。

ただ(強調)、ホップを加えたビールと異なり、グルートには無数の組み合わせの可能性が残っているのである。実際今回のものが中世に呑まれていたグルートビールの決定版的再現ということは絶対に無いだろうし、まだ可能性の扉をやっと開けた状態なのである。ということで、グルートビールについては今後も色々なブルワーが挑戦して欲しいと切に願うわけです。

湘南ビール(熊澤酒造)のMOKICHI CRAFTBEERに行ってきた(前編)

どぶろくの話を調べていて、たまたま知った事実。湘南ビールの醸造元として有名な茅ヶ崎市の日本酒蔵、熊澤酒造は、明治5年(1872年)の創業当時は自家製米を使ってどぶろく醸造し売り出すところから始まった蔵であるそうな。そしてその後歴史が下って熊澤酒造は清酒の蔵へと移行し、1996年には地ビールの醸造も始める。これが湘南ビールとなるわけだが、さらに同蔵の140周年記念となる2012年からは、その他醸造酒(濁酒)の製造免許を新たに取得して先祖帰りともいえるどぶろく醸造を再開したそうだ。たしかに熊澤酒造のどぶろくは時折目にすることがあり気になっていたが、そんな来歴あって出来た製品なわけね。

藤沢駅近くの直営ビアバー MOKICHI CRAFTBEER

まあ、そのどぶろくの話を調べたからというわけでは全くないのだけれども、藤沢駅の近くに熊澤酒造の直営ビアバーがあると耳にしたので、ちょっくら行ってきた。以前このブログでトピック立てて紹介していたとてもレアなもの(しかも2つ!)にも遭遇したので、そちらもちょっと興奮しつつレポートしよう。

MOKICHI CRAFTBEERのある場所は、藤沢駅南口から小田急百貨店の左側を抜けて徒歩3分くらい歩いたところ。ガラス張りで内部が見えるようになっているのと、樽が店の前に置いてあるのが目印。

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内装はとってもおしゃれだけれど、古い木を使ったテーブルや椅子が暖かみを感じさせる。農家に上がり込んで食事をするようなイメージも感じられて、なんというか居づらさがない感じ。

料理はイタリアンを基本として、ビアバーだけれども結構ガッツリとしたものもある。湘南野菜を使っていたり、自家製のパンであったりと、藤沢駅近辺で探すイタリアンレストランとしても大いに訴求力がありそうである。

工場直送の湘南ビールを

肝心のビアバー部分だけれども、生ビールのタップ数は12で、同社工場から毎朝直送されるビールが愉しめる。湘南ビールのラインナップって12種類もあったかいな?と疑問に思ったのだけれども、メニューには同社の聞いたこともない限定ビールが大半を占めている。なるほどサンクトガーレンなどは企画もののビールも含めてボトル売りで量販店に出しているけれども、湘南ビールは基本ラインナップ以外はボトルで出ず、基本的にはビアバーで出会うしかないのだ(そういえば、フェスで基本ラインナップ以外に出会うことも少ない)。まだまだこのブルワーを知らなかったなという気持ちがしきり。

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お得な3種類テイスティングセット(1080円)があったので注文。デュベルトリプルホップでも使われたエキノックスホップを使ったIPAとか、作っていたことを全く知らなかった。

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テイスティングセットにはおつまみ用のモルトがついてくる。こういう趣向は新潟の八海山泉ビレッジでもあったなと思い出しつつ齧る。結構量が多いのと、モルト自体が骨太の風味を持っているので、ビールによっては肝心の味や香りが分かりにくくなってしまうというのがちょっと残念。

MOKICHI CRAFTBEERと銘打ちながら、やっぱり熊澤酒造は日本酒蔵であるわけで、同社の日本酒『天青』のラインナップも充実していた。こちらも唎き酒セットが用意されていたりして、本当に悩ましい。いくら呑んでも酔わない身体が欲しくなる。

『天青』のファンにも魅力的なお店かもしれない

 

というわけでエントリも長くなってきたので、レアものとの邂逅は次回、後編で書く!

どぶろく『白川郷』は岐阜県大垣市で作られている

どぶろくの話題ばっかり、数エントリに渡って書いてきたが、そろそろ終息。どぶろく酒税法上のカテゴリや各地のどぶろく祭りを調べていて面白そうだなと思ったエピソードを紹介しよう。

白川郷のお土産用どぶろく白川郷

岐阜県大野郡白川村にある白川郷合掌造り集落。毎年10月に集落内の3つの神社(白川八幡宮・鳩谷八幡神社・飯島八幡神社)でそれぞれ別の日にどぶろく祭りが行われる。このお祭りのためのどぶろく醸造許可は、前エントリを含め何度も触れてきた、神社の祭事に合わせて特別に下りる醸造許可。祭の当日の境内での振舞いを基本とし、どぶろくの外への持ち出しや開催日以外での振舞い・販売ができない(もっとも、白川八幡宮内のどぶろく祭りの館という資料館では見学の最後にどぶろくを呑むことが出来るが。こちらも、管轄税務署の匙加減ってやつかもしれない)。

ところで、酒類大型量販店(特にイオン系列)に行くと、名前もそのまま『白川郷』という濁り酒が並んでいるのを目にすることもあると思う。

白川郷』の通常版(清酒

 

商品リンクのキャプションにも書いたが、酒税法上の区分では清酒になる。どうしてどぶろく一般がそうであるようにその他醸造酒(濁酒)の区分に入らないのかは、おさらいで下記エントリを読んでみてくださいな。

hadanon.hatenablog.comと、話が逸れそうになったけれども、あまりにこの『白川郷』を見かけることが多いので、白川郷どぶろく祭りの知名度にひっかけた便乗商品なのかと長らく思っていた。

実は白川郷のオフィシャル土産品的立場だった?

なにしろ、醸造元の三輪酒造が所在するのが、岐阜県大垣市である。白川郷とどれくらい離れているかは、直線距離でもじつに100km以上離れている。

それでも、三輪酒造では他社が白川郷どぶろくに目を付けるよりもずっと前に、この『白川郷』を製品として販売していたようだ。ホームページの紹介によれば、昭和49年にときの白川村村長に依頼されて、一年中販売可能などぶろくを製造・販売するに至ったというのだ。神社の祭事特例だと提供場所や持ち出しの縛りがあるし、当時はどぶろく特区の存在など露ほどもなかった。ということで、通年販売可能な『白川郷』は実質オフィシャルな土産品として白川郷どぶろくの関係を内外に広報し続けてきたのだ。

冷凍技術で火入れを行わない『白川郷

ただ、以前のエントリで紹介したように現在では酒造メーカーが作るどぶろく風濁り酒は珍しいものではなくなってきた。白川郷との距離的関係でいえば、直線距離で20km強離れた飛騨古川に渡辺酒造店というメーカーがあり、『飛騨のどぶ』という濁り酒を出している。白川郷どぶろくに近い味を求めようとして、そちらに手を出す観光客も多いだろう。

という事情もあってか、三輪酒造はこの『白川郷どぶろくのヴァリエーションを多彩にして、ただの濁り酒でなくより本物に近いどぶろくも取り揃えていることを売りにしようとしているように見える。より本物に近いということで、まず酒税法上のカテゴリが清酒でなくその他醸造酒(濁酒)となるような"漉さない"どぶろくという方向性がある。そして、通常店頭に並んでいるどぶろくが製造段階で火入れをして発酵を止めてしまっているのに対して、火入れを行わない出来立てどぶろくに近い製品をラインナップに用意している。

火入れなしの発酵中のどぶろく製品は、どぶろくと濁り酒の違いについて調べたエントリ(↑上に貼ったサムネイル付リンクと同じ)で紹介した武重本家酒造の『十二六』などがあるのだが、発酵中のものなのでバクハツあるいは酸っぱくなってしまう前に売り切らないと行けない事情から、季節限定予約製造販売である。一方、三輪酒造の場合には、発酵状態のどぶろくを冷凍してしまうことで輸送・保管中の発酵を止めてしまい、その結果通年販売を実現している。

冷凍しても酵母は全滅するわけではないので、解凍後発酵が進む

 

なるほどこれを解凍して振舞えば、季節を問わず自宅で本格的などぶろく祭りが開催できるだろう(笑)。

どぶろくの販売を実現するための様々な工夫を見ていると、厄介な酒税法を挟んで、日本人のどぶろくに対する執念のようなものが見えてくるのである。