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国産ブランド小麦「さぬきの夢」「ラー麦」などなど

前回のエントリでは、湘南のブランド小麦3種類について小麦の品種についてのチェックをした。共通しているのは、小麦の品種自体は他県機関が開発したものを選び、栽培地が湘南であることを湘南ブランドの根拠としていること。

一方、県の機関が研究開発を主導し品種登録にこぎ着けた小麦を、県内の農家に独占栽培させてブランド化するという試みを行っている自治体もある。共通しているのは、麺類という形で最終消費地も県内に収まること。3県の例について見てみよう。

香川県ブランド小麦「さぬきの夢」

香川県と言えば、うどん県だ。そしてうどん文化が出来上がる背景に、小麦粉の一大産地としての姿があった。主に稲作の裏作という形で作付けが行われていたようだが、高度経済成長後に輸入小麦との価格競争に負けて生産が減少の一途をたどったようだ。

そんなわけで、讃岐うどんに限らずうどん用の小麦として最も多く使われるのは、前回出てきたオーストラリア産のうどん用リーサルウェポンである、ASWだ。長らく香川県の奨励品種の座にあった農林26号は苦境に立たされた。

そこで、2000年に香川県農業試験場はうどんに適した小麦としてさぬきの夢2000(香育7号)を開発する。ただ、さぬきの夢2000は生産量が少なく、またうどんに加工するのに扱いが難しかったため、やはりASWを逆転する結果にはならなかったようだ。あとは、2004年に産地偽装問題でケチがついてしまったというオチもあるようだ。

2010年には、後継となるさぬきの夢2009(香育21号)が品種登録される(なんだかこの流れでいくと、次はさぬきの夢XPとかさぬきの夢Vistaとかの名前になりそうだが…)。収量性が上がり、より滑らかなうどんができるそうで、ASWのオーストラリアでの作付けが減少し価格に反映している状況で、巻き返しがはかれるかが注目される。

なお、さぬきの夢を使ったうどんを通年提供している店は、「さぬきの夢こだわり店」という認定を受けられる。讃岐うどんは熱狂的なファンが多くメディアに紹介されることも多いため、こうした"こだわり"がアピールになりやすいというところもあるだろう。

(参考サイト:さぬきの夢物語 県産小麦のあゆみ

福岡県ブランド小麦「ラー麦」

福岡県の場合も、うどん用小麦の栽培が盛んで、小麦生産量が北海道に次いで2位(数字的には1位に10倍以上離されているけれど)である。栽培地は主に筑後地方。筑後地方でもやはり稲作の裏作として小麦が作られてきた。うどん用の農林61号が主な品種であったが、農林61号の欠点を補う形で筑後市の農研機構九州沖縄農業センター(旧九州農業試験場)発のシロガネコムギ、チクゴイズミ、ニシホナミといった品種が登場し転換が行われている。また、パン用強力粉としては2003年にミナミノカオリが登場。食生活の変化に対応した転換も行われているようだ。

そんな福岡県小麦事情の中で登場したのが「ラー麦」。こちらは国の機関である九州沖縄農業センターではなく、筑紫野市の福岡県農業総合試験場で開発、品種登録された麦である。さぬきの夢の例もそうであるが、県の機関が開発しているため、県外に出さず独占を行えるということである。神奈川県の無花粉ヒノキの例で言及した独占権を最大限に行使する形だ。

ラーメン専用に開発された麦であるラー麦は、福岡県内のラーメン店で大々的に採用されている。その中には、一蘭一風堂、山小屋などの有名チェーンの県内支店も含まれている。全国展開する有名チェーン店としても、ラー麦の麺を使っているのは県内の支店のみ、ということでマニア向けの集客文句にも出来て一石二鳥なのだろう。

余談だが、最近経営が苦しくなって注目されているマルタイラーメンの、九州内でのライバルの一つといえるサンポー食品は、ラー麦棒ラーメンを販売していたりする。マルタイが九州棒ラーメンの代名詞のように捉えられているかもしれないが、それは違う(ただし棒ラーメンの商標を取っているので、他社製のものは棒状ラーメンと表記しないといけない)。全国知名度には差があるけど。というどうでもよい九州トリビアを交えつつ。

(参考サイト:福岡県庁「ラー麦」ホームページ

長崎県ブランド小麦「長崎W2号」

ラー麦の旧名称は「ちくしW2号」であったらしいが、「長崎W2号」と名付けられた品種があり、こちらは長崎ちゃんぽん用の小麦である。

ただし上の2県の例と異なり、開発には九州沖縄農業センターが絡み、長崎県農林技術開発センターとの共同開発という形になっている。九州沖縄農業センターでパン用に開発された小麦の開発を引き継いで県が品種登録したというあらましのようであるが、その場合品種栽培の県内独占が出来るかどうかはわからない。

(参考資料:長崎県農林技術開発センタープレスリリースPDF

 

このように、県が新たな品種を登録して作るブランド小麦という流れがあるようだ。品種登録と栽培独占から特産物を作りあげる流れが、江戸時代の藩政の復活のように見えて面白い。

湘南のブランド小麦について見てみると、平塚市の湘南カオリ小麦などが行っているのはB級グルメ麺(湘南カオリ麺)との連携であり、目指す方向性として重なる部分があるのではないかと思う。ただ、その場合にはやはり県が開発した品種でなく、ありきたりな品種を使っているということがプロモーション上の押しの弱さになるのかなと思えないこともない。