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どぶろく『白川郷』は岐阜県大垣市で作られている

どぶろくの話題ばっかり、数エントリに渡って書いてきたが、そろそろ終息。どぶろく酒税法上のカテゴリや各地のどぶろく祭りを調べていて面白そうだなと思ったエピソードを紹介しよう。

白川郷のお土産用どぶろく白川郷

岐阜県大野郡白川村にある白川郷合掌造り集落。毎年10月に集落内の3つの神社(白川八幡宮・鳩谷八幡神社・飯島八幡神社)でそれぞれ別の日にどぶろく祭りが行われる。このお祭りのためのどぶろく醸造許可は、前エントリを含め何度も触れてきた、神社の祭事に合わせて特別に下りる醸造許可。祭の当日の境内での振舞いを基本とし、どぶろくの外への持ち出しや開催日以外での振舞い・販売ができない(もっとも、白川八幡宮内のどぶろく祭りの館という資料館では見学の最後にどぶろくを呑むことが出来るが。こちらも、管轄税務署の匙加減ってやつかもしれない)。

ところで、酒類大型量販店(特にイオン系列)に行くと、名前もそのまま『白川郷』という濁り酒が並んでいるのを目にすることもあると思う。

白川郷』の通常版(清酒

 

商品リンクのキャプションにも書いたが、酒税法上の区分では清酒になる。どうしてどぶろく一般がそうであるようにその他醸造酒(濁酒)の区分に入らないのかは、おさらいで下記エントリを読んでみてくださいな。

hadanon.hatenablog.comと、話が逸れそうになったけれども、あまりにこの『白川郷』を見かけることが多いので、白川郷どぶろく祭りの知名度にひっかけた便乗商品なのかと長らく思っていた。

実は白川郷のオフィシャル土産品的立場だった?

なにしろ、醸造元の三輪酒造が所在するのが、岐阜県大垣市である。白川郷とどれくらい離れているかは、直線距離でもじつに100km以上離れている。

それでも、三輪酒造では他社が白川郷どぶろくに目を付けるよりもずっと前に、この『白川郷』を製品として販売していたようだ。ホームページの紹介によれば、昭和49年にときの白川村村長に依頼されて、一年中販売可能などぶろくを製造・販売するに至ったというのだ。神社の祭事特例だと提供場所や持ち出しの縛りがあるし、当時はどぶろく特区の存在など露ほどもなかった。ということで、通年販売可能な『白川郷』は実質オフィシャルな土産品として白川郷どぶろくの関係を内外に広報し続けてきたのだ。

冷凍技術で火入れを行わない『白川郷

ただ、以前のエントリで紹介したように現在では酒造メーカーが作るどぶろく風濁り酒は珍しいものではなくなってきた。白川郷との距離的関係でいえば、直線距離で20km強離れた飛騨古川に渡辺酒造店というメーカーがあり、『飛騨のどぶ』という濁り酒を出している。白川郷どぶろくに近い味を求めようとして、そちらに手を出す観光客も多いだろう。

という事情もあってか、三輪酒造はこの『白川郷どぶろくのヴァリエーションを多彩にして、ただの濁り酒でなくより本物に近いどぶろくも取り揃えていることを売りにしようとしているように見える。より本物に近いということで、まず酒税法上のカテゴリが清酒でなくその他醸造酒(濁酒)となるような"漉さない"どぶろくという方向性がある。そして、通常店頭に並んでいるどぶろくが製造段階で火入れをして発酵を止めてしまっているのに対して、火入れを行わない出来立てどぶろくに近い製品をラインナップに用意している。

火入れなしの発酵中のどぶろく製品は、どぶろくと濁り酒の違いについて調べたエントリ(↑上に貼ったサムネイル付リンクと同じ)で紹介した武重本家酒造の『十二六』などがあるのだが、発酵中のものなのでバクハツあるいは酸っぱくなってしまう前に売り切らないと行けない事情から、季節限定予約製造販売である。一方、三輪酒造の場合には、発酵状態のどぶろくを冷凍してしまうことで輸送・保管中の発酵を止めてしまい、その結果通年販売を実現している。

冷凍しても酵母は全滅するわけではないので、解凍後発酵が進む

 

なるほどこれを解凍して振舞えば、季節を問わず自宅で本格的などぶろく祭りが開催できるだろう(笑)。

どぶろくの販売を実現するための様々な工夫を見ていると、厄介な酒税法を挟んで、日本人のどぶろくに対する執念のようなものが見えてくるのである。