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玉櫻酒造 『玉櫻 夏純米』

夏の暑い時期に呑む日本酒は難しい。

日本酒の愉しみ方は、色々な派閥はあるだろうと思われるものの、酒米の風味のふくよかさを口の中で感じることであるという考え方は、かなりの賛同を得られるものであると思う。なにしろ米を原料に作った酒であるので、米の風味を感じなくても良いのであれば、別に日本酒でなくても良いではないか。そこで米の種類であるとか、精米歩合であるとかが重要な事柄として、酒のパッケージに記載されているのである。

夏は日本酒を呑みにくい季節

この日本酒を特徴付けていると言える米の風味であるが、連日真夏日猛暑日が続く季節においては酒を呑み進める妨げとなる。暑さに対しては、ビールのような炭酸で流し込める酒や、蒸留酒のようにロックで高い度数のアルコールを一気に流し込み酔うことの出来る酒の方が適している。日本酒には主食である米のイメージがつきまとい、夏バテ気味の体に重い食事を摂っているようで辛いという感覚もある。そして何より日本酒の暦を鑑みたときに、夏に出る酒というのが新酒の時期を外した古いものであるということを知識としてもっていれば、夏の日本酒というのはますます呑みにくいのである。

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玉櫻酒造 『玉櫻 夏純米』は米の風味をあきらめない夏酒

では日本酒蔵の各社はどのように夏の季節の酒を売っているか。各社の考え方の違いにもよるが、春先に火入れして夏を越し、2度目の火入れを行わず秋に市場に出す"ひやおろし"を少し早めに投入して夏酒として売っている蔵や、にごり酒を筆頭としたスパークリングタイプの酒を販売する蔵、そして一切の火入れを行わない生酒をそのまま夏酒として売り出す蔵もある。

今回紹介する島根県玉櫻酒造の『玉櫻 夏純米』は、火入れ1回の夏用純米酒である。同社の夏酒にはこの夏純米と、『玉櫻 涼風純吟』という精米歩合の高い純米吟醸ベースのものがあり、夏純米の方は四合瓶で1200円程度で買える。運が良ければ、近辺では厚木の寿屋酒店に置いてあるかもしれない。

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瓶から盃へと注ぐと、多少黄色みがかって美味そうな液体に対面することとなる。夏酒というから涼しそうな無色透明に近くなるのかと思いきや、これは意外である。

冷やした『玉櫻 夏純米』を呑んでみると、確かに呑み易いように諸々の味の立ち上がりが遅くなっている気がする。アルコール度数が14度と低めなのも、加水をしている結果であろうか。ただ酒米の風味しっかりで、酸味と苦味がヨーグルト系飲料のように強く起こる。夏酒だからと言って米の風味を諦めたりはしないのだ。

燗酒にしても勿論良し

四合瓶の8割ほどを呑み干して、さて残りをどうしようかと考えたとき、燗酒にすることを思い立った。夏に燗酒というのは苦行であるが、このお酒は燗にしても絶対に美味いという確信があった。そして、実際熱燗にして呑むとより苦味が際立ち美味い。冷酒派の自分が転向してしまいそうだ。

玉櫻酒造は島根県邑智郡邑南町という島根の山どころにあって、その辺りの街並は耐寒性をもった石州瓦のオレンジ色屋根が美しい。燗酒のメッカでもあり、酒蔵がまさに燗酒の布教を標榜している節もある。燗酒に転んでしまったのは、酒蔵の思惑にハマってしまったのか、それとも夏が終わり涼しい秋がとうとう訪れたからなのか。いずれにせよ、これからの季節にありがたい日本酒の銘柄として、玉櫻の名前を覚えておこうと思った次第である。

宴会の最後にだらだらと燗で呑み続けられるよう加水された"殿(しんがり)"

 

古式にのっとった生もと造りの純米酒。勿論燗で呑むことが推奨されている