神奈川県産材料使用クラフトジン『The Japanese Craft GIN 黄金井』を呑んでみた
厚木市にはクラフトビールブーム黎明期より、クラフトビール醸造を行うブルワーが3社存在している。バレンタインのチョコビールや感謝の一升瓶ビールなどで全国的に見ても結構な知名度を持っていると思われる、サンクトガーレン。コアなファンが多く全国知名度はあまり高くない一方、各地の飲食店からオリジナルビールを醸造委託されるケースが多い厚木ビール。そして日本酒銘柄『盛升』の蔵元として今年丁度創業200周年を迎えた黄金井酒造。それぞれのブルワーで得意分野が違うが、共通するのは丹沢由来の豊富な地下水が利用でき、物流の拠点としても便利という厚木市のメリットを活かし事業を続けているということだろう。
黄金井酒造創業180周年を期に始まった『さがみビール』ブランド
さて3社の中でも最も酒造りの守備範囲が広いのが黄金井酒造。元々日本酒の造り酒屋として文政元年(1818年)に創業した黄金井酒造だが、昭和50年代より日本酒造りの際に出る酒粕を使った粕取り焼酎をラインナップに加え、その後米焼酎やリキュールなどの醸造にも手を出して行ったという。クラフトビールの『さがみビール』については丁度20年前の創業180周年を期に製造を始めたもので、フルーツなどの副原料が加えられることも珍しくないクラフトビールの特性を活かして、かぼすや桃など地元産の原料を加えたご当地ビールをこれまでにリリースしている。また醸造所の近くには直営イタリアンレストランのセルバジーナをオープンしており、窯焼きのピザとクラフトビールを一緒に楽しめる場所を提供するほか、年に一度の"さがみビール祭り"の際にはこのセルバジーナが会場となり、ビュッフェスタイルの料理とJAZZバンドによる演奏で地元の方でもクラフトビールファンでも楽しめるイベントを開催している。
創業200周年記念ジン『The Japanese Craft GIN 黄金井』
さて、先述のとおり2018年は黄金井酒造が創業200周年となる節目であったのだが、また新しい分野への挑戦をということで、近頃ブームになってきているクラフトジンの分野に参戦をしてきたようである。
クラフトジンというのはクラフトビールブームを踏襲する形で世界的に脚光が当てられてきた感もあるプレミアムなジンのことで、ジンに香り付けをするための植物原料"ボタニカル"を多いものでは数十種類加え、香りに深みと奥行きを持たせたジンのことである。
黄金井酒造が9月25日より販売開始したクラフトジン、『The Japanese Craft GIN 黄金井』は、ベーススピリッツに同社製の粕取り焼酎と米焼酎を使い、ボタニカルについては神奈川県産という縛りで9種類の原料を選びベーススピリッツへの漬け込みを行っている。その内訳は、厚木七沢産のカボスとどくだみ、相模原産の山椒、伊勢原産の桜花、大和産のレモングラス、清川産の茶葉、県産の湘南ゴールド、杉、檜ということだ。これにジンのアイデンティティーとなるジュニパーベリーを加えている。
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呑んでみた感想…粕取り焼酎部分をどう評価するかで好みは分かれる?
この『The Japanese Craft GIN 黄金井』の価格は500mlで4500円、200mlで1800円ということで、試しに200mlの瓶の方を購入してストレートや割呑みなど色々試してみた。感想としては、確かにボタニカル由来の華やかな香りがあり、山椒や柑橘、茶葉など分かり易く感覚に訴えかけてくる。割って呑んだときに口の中に残り続ける芳香はひたすら楽しい。
ただストレートで呑んだときなどに顕著なのだが、粕取り焼酎の独特の香りが目立ち過ぎて、まあ粕取り焼酎そのものを呑んでいる気分になる(笑)。ベーススピリッツに粕取り焼酎と米焼酎を選んだのは手近だったからであろうが、個人的にはあまりクラフトジンの棚にこの製品が並んでいて欲しくない。黄金井酒造のコーナーに製品バリエーションの一つとして置いてある分には一向に構わないのだが。
ただ考え方によっては、ジンのボタニカル由来の香りがカクテルベースとしてその実力を遺憾なく発揮出来るように、粕取り焼酎の香りもスピリッツの味付けとして意外な可能性を見せてくれることもあるかもしれない。もしかしたらこの製品が遠く外国のバーにクラフトジンとして紹介され、粕取り焼酎の香りを新しいと思ったバーテンダーによって新たなエキゾチックなカクテルのベースとして使われるかもしれない。そう考えるとこの製品にクラフトジンというラベルがつくことは、確かに新しい市場の開拓方法として間違ってはいないだろうと思えるのだ。
ということで、そうした戦略込みではこの製品を評価したいかも。ジン好きの人にとっての粕取り焼酎入門としても面白いかもしれないので、まあどこかで見かけたらぜひ試してみて欲しい。