元号が変わったら日本酒の酒造年度(BY)はどうなるの?という疑問
昨年8月8日に今上天皇が"お気持ち"を表明されたことで、色々あって平成の世が平成30年までで終わり、平成31年の元旦に改元が行われるよう法案が整備されそうである。
日本酒の酒造年度は一体どうなる?
改元によって、社会に相応の混乱が生じ、また業界によっては新たな需要の創出に湧くだろう。ただ吞ん兵衛が一番気になるのは、そんなところではない。これまで年号の数字をとって呼び習わしていた、日本酒の酒造年度。これが改元を跨いでしまうと、数字の重複が起こって混乱してしまうのではないだろうか。そこのところ、どうなっているのだろう。気になって、夜の寝酒もはかどらないのである。
そもそも酒造年度って何?
酒造年度(Brewery Year)とは、字義通りにはその酒が造られた年度がいつかということである。醸造年度や製造年度という呼び方もされるが、一番目につく呼び方は年号の数字の後に付けて、たとえば平成28年度に醸造された(正確には、酒をもろみと分離する「上槽」のタイミングをとる。酒蔵の前には杉玉が出る)酒なら28BYというように略して表記するものだろう。
日本酒の年度はカレンダーどおりの年度と異なり、たとえば本日(4月25日)に醸造された酒が仮にあったとして、平成29年だから29BY、というようにはならない。酒造年度の始まりは毎年7月1日で終わりが6月30日と決められているので、例に挙げたような酒の場合28BYとなる。
誰がそんな年度を決定したのかというと、どぶろくと濁り酒の違いでも出てきた国税庁。酒税は年間醸造量によって課税額の変わる従量課税方式なので、大多数の蔵で醸造が行われない6、7月頃に区切りがあると税金対策で生産を前後されることもなく都合が良いのだ。そしてこの課税額計算の区切りに合わせて、6月決算にしている蔵も多い。
酒造年度が表に出るようになったのはいつ?
そんな現在の酒造年度、いつ始まったかというと、昭和40年のことだ。それ以前は10月1日始まりで9月30日締の年度(明治29年酒造税法)であったが、醸造技術等の進歩により冬以外にも日本酒作りが出来るようになったので、実情に合わせて年度の始まりを前倒しした形である。
昭和の頃には、あまりこのBYは重視されることはなかった。それに対して、ここ10〜20年程で酒屋の店頭でも見ることの多くなった、"古酒"のブームが消費者のBYへの関心を呼び起こし、他の表記事項とともに日本酒のパッケージにBYが表記されるようになった。ワインでいうところのヴィンテージが、日本酒についても語られるようになったということだ。
つまり、BY表記がされているのは殆どが平成の世に生まれた酒であるし、よしんば昭和の頃の酒についてBY表記を行っていたとしても、数字は40以降となり、30年で終わる可能性が高くなった平成の数字とは被る可能性がないのである。
元号 + 年数 + BYとするのが妥当なのかな…?
そこで今回の改元が行われると、数字は再び1からカウントアップされていくことになる。平成1桁年のBYの酒というものも僅かながら市場に出ているし、何か対策をとらないと混乱が生じてしまう。再びワインのヴィンテージの例を出すが、こちらは西暦表示を行っているため、キリストがこの世に再誕するとかいう事態が無い限り被りが起こる可能性はないのである。
で、改元後の酒造年度表示はワインの例に合わせて西暦にするのかというと、そもそものBYの誕生経緯が役所が決めた年度であるので、それは考えにくい。そこで、たとえば平成28年の酒造年度の酒であれば、"平成28BY"といったように元号を付けて表示するのが、妥当なのかなぁというような気がする。
BYの仕組みはこんな感じで、それを知っているとたとえば現在の年号と同じBYのひやおろしはありえないとか、色々と日本酒の雑学も広がり恥をかかなくて済むようになるのである。