もう死なないで準一 事件
国道246号、秦野市と伊勢原市の境にある善波峠。この場所にはかつて、地方の国道の市境によく見られる、スローガンを書いた看板が立っていた。
ただ、そのスローガンは「おいでませ秦野」や「たばこの里秦野市」「おかえりなさい秦野市」などのありきたりな文句ではなく、このように書かれていた。
「もう死なないで準一」
わけがわからない。そして怖い。
実はこの準一は実在した少年である。もしご存命なら65歳だというから、大多数の諸氏の人生の先輩にあたろう。
当時17歳だった準一少年は、善波峠をバイクで走っている最中に、トラックにはねられて亡くなった。この事故が起こったのが1965年だが、それからというものトンネルを走っていると、準一少年がたびたび出没し、通行車にはねられるのが目撃されるようになったらしい。
そして翌年の1966年に、何を思ったか遺族達は派手に飾ったもう死なないで看板をここに立てたらしい。もう死なないでの対象は、誰なのか。そのメッセージは誰のためのものなのか謎であるが、おかげで秦野市は最初で最後の名物を有するようになった。
この看板は、平成元年に撤去されたため、今はもう見られない。しかし、この看板を撤去したという事は、準一の死にゴーサインが出たという事なので、付近を通行する際にはまた準一を見る事が出来るのかもしれない。