結構沢山ある? 小麦の分類方法について
TOKIOの作る小麦を調べる過程で、「中力粉」とか「(超)強力粉」とか、「春麦」とか「冬麦」とか。小麦のカテゴリ分けについて少し触れたと思う。小麦をカテゴライズする方法には何種類かある。それらを製粉振興会のコンテンツ等を参考に、かいつまんで説明してみたい。
栽培時期による分類
栽培時期による分類は、いわゆる「春麦」と「冬麦」の違い。本来小麦は秋に種を播いて、翌年の夏に収穫する。冬の寒い時期を超えるので、冬麦と呼ばれる。
一方、春に種を播いて夏の終わりに収穫する春麦があり、こちらは突然変異種ということになる。春麦のデメリットは収量が冬麦の3分の2程度になってしまうということであるが、硬質小麦での製パン適性は春麦の方があると言われている。
春麦冬麦いずれにしろ、収穫時に雨に降られると病害を被るので、雨が降る前に収穫しないといけない。北海道で春麦が作れるのは梅雨や台風での降雨の心配が無いためだ。
粒の硬さによる分類
小麦の粒の硬さでの分類、最も硬いものは「硬質小麦」と呼ばれる。続いて「準硬質小麦」、「中間質小麦」、最も柔らかいものが「軟質小麦」となる。単純に硬質小麦と軟質小麦の二分類で語られることも多い。大体蛋白質含有量を反映しており、硬質小麦の方が蛋白質は多い。
粒の見た目による分類
小麦の粒の外皮が何色であるかということでの分類も存在する。外皮が赤いものは「赤小麦」、白いものは「白小麦」となる。外皮の色はやはりおおむね蛋白質の含有量を反映しており、蛋白質が多いと赤くなる。
小麦の粒を切断した際に、断面が半透明になるもの、これは「硝子質粒」と呼ばれる。一方、白く粉状のものは「紛状質粒」だ。硬質小麦の方が硝子質粒になりやすい。
穂に生る粒数での分類
一小穂に生る粒数により、「一粒系」、「二粒系」、3〜5粒の「普通系」に分けられる。これは生物学的分類でもある。当然栽培種としては収量が多い方が好都合なので、殆どが普通種だ。
小麦粉の色(灰分量)による分類
小麦粉に製粉した際に、麦の中心部に近い部分から粉砕されたものは綺麗な白色になり、周辺部から粉砕されたものは灰分の多いくすんだ色になる。白色の方から、「1等粉」、「2等粉」、「3等粉」、「末粉」と続く。2等粉以上のものが食品用となり、以下のものは澱粉とグルテンに加工したり、飼料にしたり、ベニヤ版接着用の糊として使われたりする。
小麦粉の蛋白質含有量による分類
小麦粉に製粉した際に、蛋白質が多いとコシがあらわれ、少ない場合はダマになりにくい。蛋白質の多い方から「強力粉」、「準強力粉」、「中力粉」、「薄力粉」となり、それぞれの用途も異なる。これまで紹介した小麦粉を分類してみよう。
分類 | 蛋白質含有量の目安(%) | 主な用途 | 品種・銘柄の例 |
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強力粉 | 11.5〜13.0 | 食パン |
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準強力粉 | 10.5〜12.5 | 中華麺・点心 |
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中力粉 | 7.5〜10.5 | うどん・ビスケット・和菓子 |
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薄力粉 | 6.5〜9.0 | カステラ・ケーキ・天ぷら粉 |
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小麦粉の蛋白質含有量には同品種でも幅があるので、上記の表は目安程度に考えてほしい(たとえば、ニシノカオリの中力粉が絶対にあり得ないという意味の表ではない)。また同品種でも出穂後の追肥という方法を使って、本来よりも蛋白質含有量を上げることも出来るようだ。
輸入小麦が品種でなく銘柄になっているのは、複数品種のブレンドが銘柄を与えられて輸入されるため。ASWなどの名前は品種名ではないということだ。
乾燥パスタ用の小麦粉
蛋白質含有量による分類では強力粉に入り、また粒の硬さによる分類では硬質小麦に入るであろう品種で、デュラム種というものがある。イタリアの法律では、乾燥パスタはこの品種をセモリナという粗挽きにしたものと水のみで作らないといけない。そこで、この品種に関してはデュラム・セモリナという独立カテゴリーで流通する。
国内ではこのデュラム種がうまく栽培できないため、乾燥パスタ用の小麦粉は輸入するしかなかったのだが、これも国産小麦でまかなってしまおうというプロジェクトが存在するようだ。北海道の留萌で栽培されるルルロッソ(北海259号)という品種がそれである。
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粉で流通させる以外にも、ルルロッソブランドをつけて留萌市内のフタバ製麺が生パスタや乾麺に加工し、全国に出荷する(おお、まさに第6次産業だこれ)。
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国産小麦の執念は凄い
というわけで、沢山ある小麦の分類方法について見てきたわけだが、ちゃんとそれぞれの分類をカバーする国産小麦品種というのが開発されているというところが凄い。
とは言え、ここまでの網羅性をもつようになったのは、平成10年(1998年)5月に農水省が決定した「新たな麦政策大綱」の中で、国産麦品種の研究開発について緊急プロジェクト創設の必要性が説かれ、翌年の平成11年(1999年)から「麦新品種緊急開発プロジェクト」が立ち上がったことによるだろう。このプロジェクト以降、カオリ三姉妹(キタノカオリ・ミナミノカオリ・ニシノカオリ)を始めとした新品種が育成され、全国に広がっていった。
また、平成17年(2005年)3月に「食糧・農業・農村基本計画」が改定されたことにより、平成18年(2006年)より農研機構の「新需要麦プロジェクト」が始まり、これまでにない需要を開拓する品種の育成も行われている。今後ルルロッソのような国産麦がさらに出てくることだろう。
きっと10年後くらいのTOKIOは、「世界一うまいラーメンを作って下さい」と言われて、「品種から?」と答えてくれるだろう(笑)。そんな期待。